お面妖狐
その昔が羨ましい。
「そうですか。白夜様がそれでいいならいいですよ。
あ。もう夕方ですね。
俺帰ります」
『うん。なんか、ごめんね』
「いえいえ」
一馬が帰っていって、木の上には私一人。
恋仲って、言わなければよかった…。
せっかく、一馬が来てくれたのに、あんな雰囲気の話。
でも、言わなかったら言わなかったらで後悔とかしていたかもしれない。
「びゃーくーやーさーん」
少し遠くから総司の声。
木から飛び降りて、その方向に歩いた。
「あっ!やっと見つけました!」
『なんか探してたみたいだね。
ごめんなさい』
「いいんですよ!
白夜さんが見つかったんですから」
ニコッと微笑む総司。
この笑顔も、もうすぐで見れなくなる。
名前も、呼んでくれなくなる。
この気持ちも、終わってしまう。