奇聞録
ある日常の恐怖。

一巡十話。




私の小さい頃に住んでいた集合住宅の側には、ドブ川が流れておりました。



よく、水死体が上がるドブ川でした。



死人の理由などまだ小さかった私には理解できませんでしたが、大人になると、何となく理解できました。



理解できると同時に、在る事にも気が付いたのです。



時々、街を歩いていると、ドブ川の匂いがするのです。



あの小さかった頃に嗅いだドブ川の匂いが、するのです。



決まって、水死体が流れ着いたあの時の記憶と一緒に、ドブ川の匂いは突然やって来るのです。

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