イジワル同期とルームシェア!?
元希と毬絵さんが再び浮かんだ。

はー、どうしよう。私こそ、涼子みたいに元希を責めてしまいそう。
無視すべきなんだろうけど、見ちゃったもんはさぁ。


「……もういいわよ。どこにでも言えば?」


三谷さんが急に立ち上がった。


「総務にでも社長にでも言えばいいじゃない!」


三谷さんは、まだすんすん泣いていた。
私と涼子に背を向ける背中は、しおれていて実年齢より上に見える。


「良くないことだって、知ってるわよ……。ずっと、知ってるわよ」


そう言って、三谷さんは大江戸線の汐留駅に向かって歩き出した。
足取りはしっかりしていたので、私も涼子も黙って見送る。


「なんか後味悪いね」


私が呟くと涼子が吐き捨てるように言った。


「私たちが後味悪いくらいならいいじゃん。このまま続けたら、もっと嫌な想いをする人が増えるよ」


その通りだ。涼子は何も間違っちゃいない。

私も言うべきなのかな、元希に。
他の誰かが傷つく前に、お節介でも忠告すべきなのかな。
同期として、同居人として。



< 164 / 323 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop