イジワル同期とルームシェア!?
「わかったよ。くだらないこと言ったな」


よし、牽制成功。
元希は差し出していた手を引っ込めた。

私と元希をくっつけたがっている金村夫妻に、格好のネタを提供する気はない。
見物客に紛れて金村夫妻が見ていなかったとしたって、ここで手をつないだらやっぱりおかしい。同期の距離感ではないもん。

元希は私の態度にムッとしたらしい。
私より半歩前に出ると、先に歩いて行ってしまう。

私は人を避けながら、3人の後を追った。

しかし、こんな時の常として、私は3人とはぐれた。
ほんの一瞬、人混みの中に知り合いを見つけたような気がして目で追ったら、次の瞬間に元希の背中を見失っていた。

あーあ、なんてこったいだよ。

花火をどこで見るかなんて打ち合わせはしていない。むしろ、この人の多さじゃ座って見るのは不可能じゃなかろうか。
初めて来た場所に、目印が見つからないくらい大勢の花火客。あらためて待ち合わせは難しそう。
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