イジワル同期とルームシェア!?
「セミ、嫌いなんだね」


「セミが大好きな女子の方が珍しいと思うけど」


大士朗がおかしそうに笑い、それから寂しく微笑んだ。


「文が、何が好きで何が嫌いか、そんなことも知る前に別れちゃったんだな、僕は」


もう過ぎたことなのだ。
大士朗の後悔はすでになんの意味もなさない。
夏の夜に偶然出会って、感傷的になっているだけ。

でも、少しだけ満足を覚える私って嫌なヤツだ。
元彼に別れを後悔させたい。そんなありふれてるけど、矮小な望み。

嫌悪すべき優越感を胸の奥に押し込んで、私は大士朗に告げた。


「大士朗、幸せになってね」


「うん、僕が言えることじゃないけど、文も幸せに」


二人で顔を見合わせちょっとだけ微笑む。

その時だ。


「何やってんだよ」


私の背後で冷えた声が聞こえた。大士朗が顔色を変える。

振り返る前にわかった。
元希だ。
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