イジワル同期とルームシェア!?
この件で、三谷さんは自分から傷を負いに行った。
田中部長に別れを告げ、慣れ親しんだ職場からの異動願いを出した。
あらたに歩み出すだめに、自分で動き出した。

田中部長は、多少なりともショックかもしれないけれど、帰るべき場所のある人は本質的に優位だ。
きっと、三谷さんがいなくなれば、一家のパパに戻るんだろう。

痛い想いをするのは、圧倒的に三谷さんの方。


「千葉営業所でも、頑張ってください」


この先輩は優しい以外に特筆すべきところのある人ではなかった。職場不倫だってけして見本にはできない。

だけど、自分から痛い想いをして、前を向いたところだけは尊敬する。
三谷さんは、偉い。


「三谷さん、お世話になりました」


「古町さんも仕事頑張ってね。急に抜けるかたちになってごめんなさい」


ようやく、かつての微笑みを見せてくれた三谷さんは、他の社員が出社してくる前に、オフィスを後にした。


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