イジワル同期とルームシェア!?
振り向くとそこには元希がいた。
会場を抜け、走って追ってきただろう元希は息を切らしていた。


「元希……」


「アヤ……」


再び背を向けようとした私の手を元希が掴んだ。強い力で引き寄せられる。


「逃げるなよ」


「だって!」


先が続かない。
私は手を振り払い、元希をきっと見据える。


「……アデレードホテルに引き抜かれたの?」


私の問いに、元希が自嘲気味に笑った。


「噂になってるもんな」


「やっぱり、そうなんでしょう?」


言いながら、涙が出てきた。
悔しいのか悲しいのかよくわからない。
ただ、元希が遠くに行ってしまいそうなことだけがわかる。


「来春にはアデレードホテルの営業部に迎えられることになってる」


元希が素直に答えた。
言葉の刃がざくっと私の心に振り下ろされる。

意見できるレベルの話ではないのだ。もう、すっかり決まったことのように響く元希の言葉。
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