イジワル同期とルームシェア!?
「ここで嘘でしたって言わないでしょ。好きだよ、好きだからアデレードホテルへの移籍を止めたくて来たんだもん」


言いながら、引っ込んでいた涙がまたじわじわと目尻に滲む。
気持ちは伝わったけれど、元希の移籍は変えられない。


「すまん、俺がアデレードに移籍することは、最初から決まっていたことなんだ」


『最初から』?
それはどういうことだろう。訝しく元希の顔を覗き込む。


すると元希が勢いよく身体を離す。
数歩下がって、気をつけの姿勢をとった。


「えーと、アヤに言ってないことがあります。両想いだってわかって浮かれて抱きついちゃったけど、俺の話を聞いてそれでもよければ俺と付き合ってください」


いきなり真面目な顔で言い放つ元希。

ええ?なになに?
とりあえずわけもわからず頷くと、元希が口を開いた。


「俺の本名は藍沢元希と言います。青海は母方の旧姓」


「藍沢?」


あれ、つい最近その名字、聞いた気がする。
私が記憶をたどる前に、元希が正解を言った。
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