イジワル同期とルームシェア!?
「毬絵さん、お隣のスコーンも最高なんですが。私、これ10個は食べられそう」


私が言うと、毬絵さんはいっそう顔を輝かせた。


「でしょ?でしょ?そうなの、今一番ハマってるの、このスコーン。自由が丘に本店があるんだけどね。うちの実家の近くに焼き菓子のみの支店ができて~。バニラアイスとの相性も素晴らしいでしょう?たくさんあるから、お土産で持って帰ってね!」


毬絵さんは子どもみたいにはしゃぎながら、説明する。

でも私は知ってる。
このスコーンは、私とのお茶会のためにお店に依頼して、本日の早朝に焼いてもらったもの。バニラアイスだって、懇意にしている牧場と提携し、素材にこだわり手間暇を惜しまず贅沢に作り上げた逸品。

無邪気な子どものようでいて、手段とお金の使い方は大人です、毬絵さん。

しかもこのアイスクリーム、アデレードホテルに納品する予定だとか。抜け目ないですね、次期社長。


「さー、もう少し休憩とったら、さっきの続きをやるわよ」


毬絵さんがスコーンを手ににっこりと微笑む。私は自分の本日の仕事を思い出し、緊張半分、疲労半分で頷いた。


毎週土曜日、私は毬絵さんと安島部長が暮らす松濤のマンションに招かれ、毬絵さんによる講義を受けている。
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