After
「そういえば結婚してるんだよね?でもうまくいってないって言ってたね。」
智希はそれまでの話が一段落したところでそう切り出してきた。
私が結婚している事は伝えてある。
そして雲行きが怪しく、離婚の話が出てる事も話してあった。
実のところ、私が骨折したのもそれが原因であった。
度々出る離婚話。
お互いの実家に出向いての話し合い。
相手の至らないところばかりを責め合って喧嘩しているうちに疲れていってしまった私は、大輝が仕事で家にいない間にベランダから飛び降りたのだ。

救急車で運ばれ、治療を受け、やっとそれらが終わってベッドに落ち着いた所に母と大輝が来た。
大輝は悔やむように泣いていた。
その時は愛情を感じたが、それからまた日が経つにつれ、全く飛び降りた事について話に触れたがらない大輝に疑問を感じるようになった。
一大事が起こった訳なのだから、何か大輝から話があっても良いだろう。
何故飛び降りたのか、どのような思いだったのか、これからどうしていこうか、そのようなことを大輝の方から話して欲しかった。
事実から逃げているように見える大輝に、私には諦めの気持ちが芽生えていった。
そんな中知り合った智希。
私は7歳も年下の智希にほのかな恋心を抱くようになっていた。

「うん、うまくいってないよ。離婚の話が出てるくらいだからね。」
私は苦笑いした。
「離婚するの?」
「ん・・・、多分・・・。」
私は曖昧に濁した。
迷う気持ちもある。
離婚とはそんなに小さな問題では無いのだ。
「そっかぁ。大変そうだね、結婚って。」
まだ結婚について考える事の無い年齢の智希はそんな事を言った。
私は少し淋しく感じた。
私は智希に恋心を抱いている。
それは会った事によって、大きく膨張した。
30歳になる私は離婚したら、やはり次の結婚を考えている。
智希と結婚出来たら良いな。
そんな考えもよぎっていた。
しかし智希には全くそんな気はないのであろう。
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