After
曖昧な関係
結局話し合いの結果、茂とはこのまま関係を続けることになった。
茂は尽くしてくれる。
どんな時でも私の傍にいようとしてくれる。
私はそんな茂と別れる勇気はなかったのである。
時として人はおかしな方向に勇気を使う。
私がベランダから飛び降りたときもそうだ。
私なら出来ると自分に言い聞かせて飛び降りた。
飛び降りなくてはならない衝動。
でも勢いだけでは飛び降りられなく、そこで勇気を使った。
私は何故飛び降りたのか。
何かを変えたかったのかも知れない。
飛び降りることで世界が変わる気がしていた。
主人の大輝との行き詰まった関係も、うまく動き出すかも知れない、そう思った。
実際の所得られたのは智希との出会いだった。
それはそれで良いのかも知れない。
智希との出会いで私の中の何かが変われば、歯車が動き出すこともなくはない。

私は智希に会いたいなと思った。
今日は水曜日。
仕事の後は茂と会うことになっている。
私の仕事はパートで、大学病院の研究助手をしている。
教授に言われたとおりに実験をこなし、結果を報告していく。
教授は主に肺癌細胞の研究をしていたので、時給は安いがやりがいはあった。
大抵茂とは毎日会う。
2、3分の時もあれば、数時間一緒に居ることもある。
そのために、私はパートから帰ったらまず大輝の食事作りをしておく。
食事を作りながら、またふと思う。
智希に会いたいな。
心は完全に智希に向いていた。
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