夏祭りの恋物語(1)~不機嫌な浴衣~
 そんなのひどい。そりゃ、同じクラスには学年一かわいいって言われてる女子もいるし、彼女と比べても、比べなくても、自分が平凡な容姿なんだってのはわかってる。でも、大樹は私の彼氏なんだよ? 少しくらい色眼鏡で見てくれてもいいじゃない。

 悲しくて目が潤みそうになったとき、大樹の顔が迫ってきて、私の額に彼の額がコツンと当てられた。

「今日、待ち合わせ場所で結月を見たとき、一瞬息が止まったんだ。深い青がすごく似合っていて……大人っぽくて。なんてきれいなんだろうって思った。こんなカジュアルな格好できた俺が声かけちゃいけないんじゃないかって思うくらい」

 大樹の言葉に、私は目を見開く。

「嘘……だって、大樹の方が私よりずっと大人っぽいのに」

 大樹が小さく笑って、私の唇にふっと彼の息がかかる。

「結月も俺も同い年なのに、結月が俺をおいて大人になってしまうんじゃないかって錯覚して、一瞬ヒヤリとした」
「ホント?」
「情けないけど、ホント」

 大樹の眉尻が下がって頼りなげな笑顔になる。

 そっか、大樹も同じことを思ってたんだ。

 なんだかちょっとおかしい。

「私たち、まだ付き合って三ヵ月だし……あせることなんてないんだね。これから一緒にゆっくり大人になっていけばいいよね」
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