君に恋していいですか?
SS部のオフィスに戻り明日の仕事の準備をしていると、定時のチャイムが鳴った。

「あー、間に合ってよかったぁ。」

うーんと伸びをしながら、梨花がホッと息をついた。

「お疲れ様。」

薫が声を掛けると、梨花は薫の腕に触れて笑いかけた。

「卯月さん、一緒に行きましょうね!」

「あー、うん。」

(この子はいつも男の人にもこうしてるけど…女の私にまで同じ事するって事は、無意識?)

「長野さんって…いくつ?」

「25です。あっ、梨花でいいですよぉ。」

見るからに女の子らしい柔らかい仕草や話し方は、自分に全くない要素だなと薫は思う。

(リンカ…ね…。見た目だけでなく名前まで男受けしそうな…。)

「いやいや、私、職場の人は名前で呼ばない事にしてるから。」

「なんでですか?」

かわいらしく首をかしげてジッと目を見つめる梨花に、薫は苦笑いした。

(だから…私は女だっつーの。)

「社会人としての礼儀だよ。」

「ふーん…?」

「そんな事より、行くんでしょ?早く着替えないと。」

「あっ、そうでしたね!行きましょう。」



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