君に恋していいですか?
「いい…見せる相手いないから…。」

「今はいなくても、勝負下着のひとつくらいは持っとかないと。男と女なんて、いつ何があるかわかりませんよ?」

「そういうのないからいいの。私、もうレジに行くよ。」

薫は強引に話を切り上げて、レジで会計を済ませた。

まだあれこれ悩んで決めかねている梨花の姿を見ながら、薫はため息をついた。

(下着まで相手の好みとか…。第一、好みなんて知らないし…。)

無意識にそんな事を考えて、薫は顔を真っ赤にして首を横に振った。

(何?なんなの?誰の好みを知らないって?!)


“オレは卯月さんすっげぇかわいいって思ってる”


“酔ったせいにして、同期以上の事、してもいい?”


不意に夕べの志信の事を思い出して、薫の胸はまたドキドキと音をたてた。

(違う…。あんなの酔った勢いで出たお世辞か誰にでも言う口説き文句に決まってる…。私なんかの事、そんな風に思ってるわけない…。勘違いしちゃダメだ…。)

薫はシャツの胸元をギュッと掴んで、高鳴る鼓動を落ち着けようと、何度も自分にそう言い聞かせた。






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