君に恋していいですか?
更衣室の前で、梨花と他の数人の後輩と合流した。

小綺麗な服装をしている後輩たちの中で、Tシャツにジーンズと言うラフなスタイルの薫は、誰がどう見ても浮いている。

(みんな女の子だねぇ…。会社に着いたら制服に着替えるのに、目一杯オシャレして毎朝ガッツリ化粧して通勤って…。疲れないのかな?)

楽しそうに笑って話す後輩たちの後ろを、給料のどれくらいを洋服や化粧品などに費やしているのだろうと思いながら薫は歩いた。

(私にもあんな頃が…いや、なかったな…。)

入社当初から薫は、他の女の子たちのようにオシャレをしたり、しっかり化粧をしたりはしなかった。


それでも、好きだと言ってくれた人がいた。


“薫はそのままでいいよ。”


また不意に思い出す、かつての恋人の言葉。

(結局は女の子らしくてかわいい人を選んだくせに、よく言うよ…。)


“いろいろ面倒だから、オレたちが付き合ってる事は、他の人たちには内緒にしておこう。”


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