君に恋していいですか?
「かっ…笠松くん…!!」

「オレね…誰にでもあんな事言うわけじゃないよ。ホントにそう思うから言った。」

「うん…。」

「酔って誰でも口説くわけじゃないから誤解しないで。」

どんどん甘くなっていく志信の言葉と声の心地よさに、これ以上こうしていると自分がどうにかなってしまいそうで、薫は流されそうになる心を必死で引き戻した。

「……あの…もう大丈夫…。離して…。」

「やだ…って言ったら、どうする?」

「……ダメ、離して。」

「…だよね。」

志信が背中に回した腕の力をゆるめると、薫は慌てて起き上がった。

(危うく流されるとこだった…。)

薫の体の重みがなくなると、志信はゆっくりと起き上がり、薫の背中を見つめた。

(やっぱダメか…。)

「そろそろ帰るよ。ごめんな、長居して。」

志信は荷物を持って立ち上がり、玄関で靴を履いて、ドアを開けて振り返らずに部屋を後にした。



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