君に恋していいですか?
志信がいなくなった部屋で、薫はしばらく座り込んで考えていた。

(帰っちゃったな…。もう少しあのままでいたかった…なんて…。)

まだ体に残る志信の体温と、髪を撫でてくれた手の優しさ、抱きしめられた腕の力強さ。

そっと額に触れた唇の感触…。

さっきまでここにあった志信の温もりが、薫の心を叩き、激しく揺さぶる。

あのまま志信に求められていたら、拒めただろうか?

心のどこがで、そうなる事をわずかに期待していたかも知れない。

もう誰も好きにならないと心に決めたはずなのに、どんどん志信に惹かれて、自分を抑えられなくなりそうで、怖い。

(私、やっぱりどうかしてる…。これ以上、笠松くんとは近付かない方がいい…。)





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