君に恋していいですか？
黙々と料理を食べながら、あっという間にジョッキを空にした薫は、生ビールのお代わりをオーダーした。

（あーあ、やっぱり私は場違いだな。社内で出会いなんて求めてないし。今、私がこの場に求めてるのは酒と料理だけだもんね。飲むだけ飲んで、食べるだけ食べたら帰ろうっと。）

ジョッキを片手に、ししゃもを頭からかじりながら周りの様子を窺っていると、販売事業部の上田部長と目が合ってしまった。

薫はビールを飲むふりをして慌てて目をそらしたが、上田部長は薫に近付いて来た。

（げっ…めんどくさい…。）

一体何を言われるのか、嫌な予感しかしない。

「卯月くん、こんな席にいるの珍しいね。」

「はぁ…まぁ…。」

「みんな楽しそうに交流してるけど、君はいいの？」

「私はお腹が空いてるので食べてます。」

「随分余裕なんだね。モテるのかな？」

「職場には出会いを求めてないので。」

「社内恋愛も捨てたもんじゃないよ？」

「めんどくさいのは苦手です。」

素っ気なくそう言ってビールを飲んでいる薫を見て、上田部長は小さく笑った。


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