君に恋していいですか?
(なんだろう…温かくて…気持ちいい…。)

優しく肩を抱き髪を撫でる手の感触に、薫は目を閉じたままぼんやりと身を委ねていた。

(このままずっと、こうしてたい…。)

何度も抱きしめて好きだと言ってくれた、かつての愛しい人の笑顔を思い浮かべ、薫はかぎ慣れたタバコの香りがするシャツに頬を軽くすり寄せた。

「浩樹…。」

思わず呟いて、薫はうっすらと目を開いた。

見慣れない居酒屋の店内を目にした薫は、温かいその手が浩樹ではない事に気付き、慌てて身を起こした。

「あっ…ごめん…。」

志信の肩にもたれ掛かったままでしばらく眠っていたらしい。

(酔っぱらって思いきりもたれて寝ちゃうなんて、恥ずかしい…。)

チラリと志信の様子を窺うと、薫の目には、志信が少し悲しげな顔をしているように見えた。


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