君に恋していいですか?
(傷付いてたのは卯月さんの方なのに…。)

酔った薫の口から聞かされた言葉が、志信の脳裏に蘇る。


“自分の知らないうちに浮気相手にされていた人の気持ちなんて、わからないよねぇ。”


“あんな思いは、もうしたくない…。”


“だからもう、恋愛なんてしない…。”


社内恋愛をした事があるか、とも聞いていた事を考えると、薫もかつては社内恋愛をした事があるのだろう。

相手に彼女がいる事を知らずに、本気で好きになって、おそらく深い仲だったのだと思う。

その恋がどんな風に終わりを迎え、どれほど薫が傷付いたのかは知らない。

それでも、もう恋愛なんてしないと言うほどその傷は深く、今でも薫が苦しんでいると言う事だけはわかる。

(だから社内恋愛は嫌だって言ったのかな…。相手も、もしかしてその彼女も、社内の人間とか…。)


< 194 / 290 >

この作品をシェア

pagetop