君に恋していいですか?
心配そうに見つめる志信に、薫は穏やかに笑って見せた。

「大丈夫。家には入れないし…話が済んだら電話するから…家で待ってて。」

「…わかった。じゃあ…また明日。」

「うん。」

志信は一度薫の手をギュッと握りしめてから、ゆっくりと手を離し、ポンポンと頭を撫でて、来た道を帰って行った。


志信の背中を見送って、薫はひとつ大きく息をつき、浩樹の方へとゆっくり近付いた。

「薫…今の…。」

浩樹は遠ざかって行く志信の背中をジッと見ている。

「彼とは付き合ってないって…。」

「うん。あの時はまだ違ったから…。でも、今は…私の、大事な人。」

「彼の事が、好きなのか?」


< 266 / 290 >

この作品をシェア

pagetop