君に恋していいですか?
薫を送った帰り道を、志信は落ち着かない気持ちで歩いていた。

家に帰って待っているように薫に言われ、その通りにしようと帰る事にしたけれど、やっぱり引き返そうかとか、何かされてはいないだろうかとか、薫の事が心配で仕方がない。

しかし一番心配なのは、薫の心が浩樹の元へ戻らないかと言う事だった。

(ずっと忘れられなかったって事は、きっとそれだけ好きだったからだろ…。)

もしかしたら薫は、やっぱり浩樹の方が好きだと言うかも知れない。

やっと想いが通じて薫と恋人同士になれたと言うのに、長い間ずっと薫の胸にとどまって消える事のなかったかつての恋人に、薫を奪い返されるのではないかと不安になった。

(ちゃんと断るって言ってたけど、昔の気持ちとかいろいろ思い出して、流されたり気が変わったりしないか…?)

志信はため息をついて空を見上げた。

(一緒に幸せになろうって約束したんだ。薫は約束破ったりしない。今はオレの事が好きだって言ったの…信じていいんだよな?薫…。)




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