君に恋していいですか?
その後も志信は、飲み会が終わるまで薫の向かいの席に座っていた。

一緒にお酒を飲みながら時々料理を食べて、タバコを吸いながらどうでもいい話をした。

同期の女性社員がほとんど退職してしまい、男性社員も最初の3分の2ほどの人数になっているらしい。

同期とは言え、本社の各部署だけでなく、たくさんの支社やSSなどに配属されているので、研修などがないとなかなか会う機会はない。

薫と志信は同期だからと言って特別仲が良かったわけではないが、志信が本社勤務になる前の配属先のSSで薫がカウンセラーとして面談したり、年末年始の繁忙期に高速道路のSAのヘルプに行った時に一緒になったりしたので、多少の面識はあった。

「同じ本社勤務でも、なかなか顔合わせたりしないもんだね。」

「私はほとんど本社にいないから。朝と夕方だけって日がほとんど。」

「フロアも違うしなぁ。社食にも来ないし。」

「私が本社にいる時は、たいていSS部か喫煙室にいる。」

「なるほど、喫煙室ね。今度会いに行こう。」

「なんでよ。フロアも部署も違うし。」

「だからだよ。喫煙室くらいしか顔見られる場所ないじゃん。」

「……別に見に来なくていい。」

「ホントつれないね…。同期の卯月さんが頑張ってる姿見て、オレも頑張るよ。だから、たまに顔見に行くくらいはいいでしょ。」

「…喫煙室では頑張ってる姿なんて見られないけど…。私がタバコ吸ってコーヒー飲んでる姿なんか見て、どうすんの…。」

「オレの原動力にするの。」

「意味わからないんだけど…。」





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