君に恋していいですか?
定時になって更衣室で着替えを済ませた薫は、ロッカーの鏡を覗き込んだ。

(あ…。今日は忙しくて走り回ってたから、化粧崩れちゃったかな…。汗かいたし…。)

化粧崩れなど、いつもはあまり気にも留めないのに、なんとなく今日は気になった。

化粧と言っても日焼け止めのリキッドファンデーションとリップクリームを軽く塗って眉を整える程度に描くだけで、他の女性社員のようにしっかりとアイメイクをしたり、チークやグロスなどを塗ったりはしない。

(どうしようかな。化粧道具も持ってきてないし…。)

薫は振り返ると、梨花が着替えている事に気付き、そばに言って話し掛けた。

「長野さん、悪いけど…あぶらとり紙とファンデーション貸してくれる?」

「えっ?!」

梨花の過剰な反応に驚いた薫は、なんとなく気恥ずかしくなって慌てて取り消そうとした。

「いい、やっぱりいい。」


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