君に恋していいですか?
急いで自分のロッカーの中の鞄を掴むと、薫は更衣室の出口に向かって歩き出そうとした。

「待って下さい、卯月さん!いいですよ、使って下さい。」

「いや、あの…。」

うろたえる薫の腕に手を添えて引き留めると、梨花は笑って化粧ポーチを差し出した。

「卯月さんが化粧直しなんて、珍しいですね。これからデートですか?」

「デートとかじゃないけど…。今日は走り回って汗かいたから…このままじゃ、ちょっとアレかなぁって…。」

照れ臭そうに歯切れの悪い返事をする薫の様子を見て、梨花はニッコリ微笑む。

「化粧、しましょうか?」

「えっ?!」

「卯月さん、いつもの薄化粧もキレイだけど…ちゃんとしたメイクしたら、もっとキレイになるのにもったいないですよ。」

「いや…そんな事はないし…ちゃんとしたメイクしても似合わないから…それになんか恥ずかしいし…。ファンデーション直すだけでいいから…。」


< 90 / 290 >

この作品をシェア

pagetop