飴とノイズと君の声
｢そろそろ教室に戻ろっか｣

｢あ、琳ちゃんさん、これ｣


私はたまたま持ってきていた未開封の飲料水を渡す。


｢水...？｣

｢琳ちゃんさん、ジュースを買ってくるって言って教室を出ていったと聞いたので。すみません、水しかないですけど｣

｢...ふーちゃん、なんかすごいね｣

｢私はあんまり考えたこと無いですけど、こういう小さなことでトラブルがあるようなので、一応、未然にトラブル防止です！｣

｢あはは、ありがと、ふーちゃん｣


そう言って琳ちゃんさんは水を受け取った。

教室に向かっている途中も、琳ちゃんさんは歩幅を合わせてゆっくり歩いてくれる。

やっぱり、琳ちゃんさんは優しい。
あんなに人気があるのも頷ける。


『教室に戻ったらどう言い訳しようか。マネージャーから電話がかかってきたとかでいいか』


心の中で、言い訳を考えている琳ちゃんさんの顔は、真剣。
みんなへの言い訳なんて、私は考えたこと無いから分かんないけど、やっぱり大変なんだろうな、と思う。

そう考えると、私の生き方は簡単で、単純。
周りに合わせて必死に生活するのは、やっぱり大変なんだ。
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