飴とノイズと君の声
教室に戻ると、みんなが一斉に琳ちゃんさんを取り囲む。


「もー、琳ちゃん遅いよー」

「あはは、ごめん。マネージャーから電話がかかってきてさ」

「琳ちゃん大変だねー」


さっき考えた言い訳をみんなに言って、琳ちゃんさんは「ちょっとだけね」と笑った。

琳ちゃんさんは、どうして何があっても笑っているんだろう。

ふと、そんな疑問が頭をよぎる。
楽しくなくても、琳ちゃんさんは笑っている気がする。

それを見て、みんなも笑う。

このクラスが笑顔でいるのは、多分琳ちゃんさんのおかげ。


「そういえば、今日琳ちゃんTVに出るんでしょ?」

「しかも生放送、だよね!」

「うん。新曲発表の予定だよ」

「絶対見るー!」

「私録画もしとこうかな!」

「すごく嬉しいよ!みんな応援してくれてありがとね」

「あったりまえじゃん!」


やっぱり、みんなはキラキラしてる。
琳ちゃんさんも、キラキラの笑顔。

...でも、私はキラキラの琳ちゃんさん、あんまり好きじゃないかも。
だって、キラキラの笑顔を見せている琳ちゃんさんの心の中は...。


『俺が芸能人だからって、ただそれだけのくせに...』


そんな、みんなに嫌悪を抱いている声が響いているんだから。
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