飴とノイズと君の声
「それでは、歌っていただきましょう。BAD RADで、Answerです!」


アナウンサーの画面から、昭明が消えている画面に切り替わる。
そして、照明が一気に真ん中を照らし、二人が光に包まれる。

その瞬間の観客の歓声さえ聞こえていないような、二人の表情。

メロディーは、激しいようで切ない。
愛する人を思う気持ちと、その愛する人が他の人を想っていることへの悲しみ、そして、愛する人のために自分の気持ちを押し殺すという答えを出した。
そんな歌詞だった。

琳ちゃんさんしか見れなかった。
切なげな表情も、繊細で激しくて、儚さをも含んだ歌声。


「君を想う僕の気持ちは 彼を想う君の気持ちと同じだから」

『君を想う僕の気持ちは 彼を想う君の気持ちと同じだから』

「だから僕は願う 君の恋が叶いますように 君の笑顔が枯れませんように」

『だから僕は願う 君の恋が叶いますように 君の笑顔が枯れませんように』


琳ちゃんさんの心の声は、その歌声と何ら変わらなかった。
琳ちゃんさんは、きっと歌は本当に好きなんだと思う。

そうじゃなきゃ、きっとこんなに、心は揺れない。
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