飴とノイズと君の声
その日の琳ちゃんさんは、いつもより、笑っていた。
いつもよりみんなを笑わせて、自分も笑って。

そして、すべての授業が終わった途端、琳ちゃんさんは走って教室を出て行った。


「琳ちゃん、どうしたんだろ」

「さぁ...トイレ行きたかっただけじゃね?」

「あー、ならいいけどー」


私は、なんとなく不安になった。
みんなが思ってるより、もっと理由があると思う。
琳ちゃんさんは、何かから逃げたように見えたから。


『...もう、無理。』

『助けて』

『今日はもう、笑えねぇ』


「琳ちゃん、さん...?」


不意に聞こえたその声は、涙声で、酷くか弱かった。
助けてってことは、一人でいたいわけじゃないはずだから。

私は、琳ちゃんさんの後を追うように、全速力で教室を出た。
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