飴とノイズと君の声
廊下を駆け抜けて、玄関を出て、少ししたところに、琳ちゃんさんの後ろ姿を見つけた。

私はゆっくり近づく。


「琳ちゃんさん...」


琳ちゃんさんの名前を呼ぶと、琳ちゃんさんは少しビクッと体を震わせた。
だけど、すぐに私の方を見た。

キラキラした笑顔...いや、さっきよりずっと不自然で、目の辺りは少し赤くて、潤んでいた。

泣きそうになってたのかな。


「...どうしたの?今日は帰るのも早いんだね、ふーちゃん」


琳ちゃんさんは、その不自然な笑顔を崩さない。


「これ、使ってください」


そんな彼を見て、私は鞄から折り畳み傘を出し、開いて琳ちゃんさんに差し出した。

琳ちゃんさんの顔には困惑の表情が浮かぶ。


「...ふーちゃん、今日、快晴だよ?傘なんて...」


確かに今日は雲一つ無い快晴。
傘なんて、誰もさしていない。


「...きっと、降りますよ、これから」


私がそう言うと、琳ちゃんさんの目からは、涙が一筋、零れ落ちた。
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