飴とノイズと君の声
「...俺、お前に会って、毎日楽しかった。歌うことも、話すことも。笑うことも、今までよりずっと自然に出来て...。だから、お前になら話せるかなって思ったんだ」


けーちゃんさんは、じっと琳ちゃんさんの言葉に耳を傾ける。
琳ちゃんさんは優しい表情で話し続ける。


「だから、お前に話した。愛されるのが怖いこと、信頼出来ない相手の前じゃ、怖くて寝れねぇこと。...それを聞いてるお前の表情が、あまりにも悲しそうで、泣きそうな顔するから...。だから思ったんだ。慧太は他人の不幸を自分のことと同じように捉えて、悲しんでしまうくらい優しいヤツなんだって。だから、これ以上自分のことを話したら、お前にもっと悲しそうな顔をさせるんだろうなって」

「...当たり前じゃん。琳ちゃんは、俺にとって親友なんだから。学校のダチより、昔からのダチより、琳ちゃんが、大切なんだから...。だから、琳ちゃんの悲しい話を聞いたら、悲しくなるに決まってるじゃん」

「...だから、俺はお前にこれ以上...」

「だからこそ!...だからこそ、俺は琳ちゃんの話を聞きたかった。悲しくて辛くて、そんな琳ちゃんの心の中をさ、俺は受け止めたかったんだ。琳ちゃんに、頼ってほしくて。だから、嬉しかった。確かに話を聞いてるときは悲しくなるけど、琳ちゃんが頼ってくれるようになったんだって」

「...そうだったのか。俺、お前に自分の辛さを押し付けて苦しめてるんだって思って、話すのを止めたのに」

「俺だって、琳ちゃんの役に立てなくて、もう頼ってくれなくなったんだって思ってたよ」

「...な訳ねぇだろ。お前に聞いてもらって、楽になったのは確かだ。それと同時に、俺の話を聞いてこんなにも自分のことみたいに悩んでくれるヤツが俺にもいるんだって」


琳ちゃんさんの表情は、さっきよりどこか清々しそうで、自然に微笑んでいるようだった。
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