飴とノイズと君の声
翌日、私達は病院に行った。

琳ちゃんさんの声が出なくなったのは、大きなショックを負ったために起こった一時的なものらしい。

それを聞いて、少し安心すると共に、苦しくなった。

琳ちゃんさんに、大きなショックを負わせてしまった。

琳ちゃんさんはすっかり落ち込んだ私達に笑顔を見せる。
まるで、自分が一番平気みたいに、私達を元気付けようとする。

それが、余計に私達を苦しくさせる。

自分達の無力さに、琳ちゃんさんへの罪悪感に。


『お願い、笑って』


...琳ちゃんさんの心の声に、泣きそうになる。

どうして私達を笑顔にさせようと出来るんだろう。
私は琳ちゃんさんをあんな目に遭わせた張本人。
それなのに、なんで...?


「琳ちゃん、教えてよ」


突然、けーちゃんさんが琳ちゃんさんの目を真っ直ぐに捉えた。


「...琳ちゃんの、過去を、苦しみを、俺らに分けて」


それは、強制的なようにも感じた。
だけど、それを私は止めなかった。

琳ちゃんさんの苦しみを、私も持ちたい。

それが例え無理矢理で、間違っているとしても、琳ちゃんさんの重い苦しみを、分けて欲しかった。

琳ちゃんさんは私達から目を逸らして、そしてもう一度、私達の方を向いた。

琳ちゃんさんの目はさっきより真っ直ぐで、笑うことをせず、頷いた。
< 77 / 110 >

この作品をシェア

pagetop