飴とノイズと君の声
授業中、琳ちゃんさんは真面目な表情でノートをとっている。
そんな琳ちゃんさんを、私は遠くから眺めていた。

でも、琳ちゃんさんの視線が空中を彷徨い、すぐに私は視線を逸らした。

目線を合わせたら、琳ちゃんさんは焦ってしまうかもしれない。

そう思って、遠くから眺めていた。
そしてまた、視線が合いかけると、目線を逸らす。

まるで、ゲームみたい。
でも、楽しくない。

慣れない駆け引きをしているような、そんな感覚に陥る。

なんだか、すごく琳ちゃんさんが遠い。

知らない人みたいな、そんな感覚。

もしかしたら、この感覚が普通なのかもしれない。

芸能人の、BADRADの、久遠琳くん。

近いけど遠い、アイドル。

こんなに意識したことなんて、無かった。

私は、琳ちゃんさんを芸能人としては見ていなかったんだ。
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