旦那さまの皮を被った変態が
ーー
「えっ、えっ。きもちわ……?あたしだって気持ち悪いですけど、主任はこれをご褒美と言われていたじゃないですかっ。Mな人に応えられるように、あ、あたしは鬼畜にだってなれますよ!」
きょとんからの、焦り噛み噛み口調の女性に、旦那さまはドン引きながらもいやいやいやと話されます。
「俺は別にそういった趣味はない」
Mではなく、ただの変態たる旦那さま。
ぐいっと私の体を抱き寄せになります。
「俺は、彼女以外に興味がない。諦めてくれ。君にはまったく、愛情を感じられず、嫌悪感しかない」
端的に、気遣い無用でお断りを入れる旦那さま。彼女の方はつきつけられた言葉に号泣なさっております。
ふられた女性の典型。
でも、だって、と繰り返される言葉に旦那さまは一つも同情なされない。
やがて、出せる言葉が見つからない彼女が家から出て行く。この変態夫婦っ、との負け犬の遠吠えつきで。
「あの方、これからどうなるのでしょうね」
「俺と顔を合わせたくないから、辞めるんじゃないのか?若いからな、別のところでやり直しは出来る」
至極、どうでも良さそうなお答えをいただく。
「すまなかったな。迷惑をかけた」
「うふふ、おモテになる旦那さまを持つと苦労しますわね」
「イヤか?」
無表情が珍しく崩れる。とても、不安そうなお顔。
「もっとたくさん、気持ち悪い(イヤな)ことをしている口がほざきやがりますか」
「それでも、結局はーー」
それ以上の言葉は聞きたくありませんでしたので、口を塞ぎます。手は使いたくない気分でしたので、同じく口で。
「やっぱり、変態(お似合い)夫婦だよ、俺たち」
呼吸の合間に唇を離したのがいけませんでした。もう二度と、話せないようにこのままずっと、キスをし続けるのもやぶさかではありませんね。