愛しています
翌日の朝何か取りにきたのか、優美が帰ってきた。
そして椅子にぐったり座る俺とテーブルに置かれたケーキを見て嘲笑うかのように言葉を吐く。
「ずっとこのままでいたの?うける。くそばかじゃん」
そしてテーブルにあったケーキを見せつけるように床に落とした。
それを見て俺の中で何かが切れる音がした。
「お前自分がなにしてるのかわかってるのか!?」
声を荒げる俺に少し驚きながらも、言い返してくる。
「今時こんなことする親どこにいんだよ!!ばかじゃねーの!!」
「お前をこんな風に育てるために俺は今まで頑張ってきたわけじゃない!!」
「じゃあ生まなければよかったじゃん!!」
その言葉でハッと真美と昔の優美の笑顔が浮かんだ。
その瞬間思わず真美の頬を叩いていた。
「っ…なにすんだよ!!」
「…真美が…」
「あ?」
「お前の母さんがどんな思いでお前を生んだかわかるか!?
あの時目の前でお前が生まれると同時に息を引き取った真美を見た俺の気持ちがわかるか!?
…お前が生まれてすぐ、俺はお前じゃなくて母さんを助ければよかったと思った」
「ほらやっぱり」
「違う!!確かに思ったことは事実だ!
でもお前の母さんは、お前に幸せになってほしいと思って、自分の命とひきかえにお前を生んだんだよ!!
俺はそこで目が覚めた。だから今までずっと大切に育ててきた!!
それを…お前は…なんでわからないんだよ!!」
「っ…」
「たくさん辛い思いや寂しい思いをさせてきたと思う。でも俺はそれを少しでもなくそうと精一杯やってきたつもりだったんだ…」
そう言って落ちてグチャグチャになったケーキを片付ける。
そして一言、伝えたかったことを言った。
「優美、誕生日おめでとう。
…生まれてきてくれて、ありがとう」
ちゃんと笑えていたかはわからない。
でも優美はそれを聞いてその日は出掛けることなく部屋に閉じ籠った。