realize
今日は色々トラブル続きで
仕事が終わったのは約束の時間にギリギリだった。


お陰で余計な事を考えずに済んだけど
不安でいっぱいな気持ちだった。


"お客様、イケメンだから良かったね♪"


…なんかムカツク!


いつも見透かしたように
私の心を先回りして余裕で笑ってて…



店の扉の前に到着した。

この扉を開けてしまえば、
もう後戻りはできないだろう。


きっと、今までと同じではいられない。


きっと、無かったことにはできない
そんな記憶を残してしまう。



そんな予感がしていた。



…引き返すなら今、

…無かったことにするなら今、



翔大くんは来なかった私を
責めたりしない。


翔大くんは来なかった私を
無理矢理この仕事に連れ戻したりしない。



でも、…



心がそう思っているのに…
身体はその運命の扉をゆっくりと、でも確かに押し開けていた…
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