realize
「相手の名前はさっき電話で伝えたよね?
向こうに由紀さんの名前は
" 百合"って伝えてあるから間違えないでね。」


お互いには名前しか情報を与えない。
それもルールの1つだった。


「…じゃあ行こうか。」


今まで見たこともないくらい優しく微笑み、
誘導するように前を歩き出した。


待ち合わせ場所のテラスには
一人の男性が座っている。


近づくにつれて
緊張してきた…


店内には他のお客様もチラホラいたけど
まるで舞台へ続く道のように周りが静かに思えた。


「お待ち合わせの方がいらっしゃいました」


翔大くんはテラス席に座っている男性に
落ち着いた紳士的な声と言葉使いで言った。


その言葉でその男性と目があった。
< 39 / 118 >

この作品をシェア

pagetop