猫系男子の甘い誘惑
 倫子の属していたゼミは女子学生の数の方が多く、敦樹の属していたゼミは男子学生の数の方が多かったから、都合がよかったと言えばよかったのだ。

 その日のうちに敦樹とは連絡先を交換。しばらくの間は、二人で会ってお茶をしている程度だったのが、半同棲状態になだれ込むまで長い時間はかからなかった。

「……バカみたい、だなぁ……」

 今はまったく関係ない仕事についているが、敦樹が大学で学んでいたのは児童文学だった。
 付き合っていた頃は、よく話を聞かされたから、倫子みたいに神話に疎い人間でもオーディンの持つグングニルの槍の名前くらいは知っていたというわけだ。

 もっとも、一度放たれたら敵に食らいつくという設定は、ゲーム会社としてはおいしい設定なのかもしれない。

 ラグナロク・クロニクルに限らず、ゲームではしばしば登場するという話を、これまた敦樹から聞いていた。

「倫子さん」
「……あ、ごめん」

 気がついた時には、向かい側に座る佑真はふくれっ面になっていた。

「何考えてた?」
「何って……」

 まさか、槍のことを考えていたなんて言えないだろう。曖昧に笑って誤魔化そうとするけれど、佑真はそれを許さなかった。
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