猫系男子の甘い誘惑
「ねえ、倫子さん。俺は約束を守るよ。あいつのハートをぐっさりする手伝いをする。だから倫子さんも一つ約束をしてよ」
「……何?」
「一人の時はしかたないけど、俺と一緒の時はあの人のことは考えないで」

 言葉を失っている倫子に、それから彼は最高の笑顔を見せた。

「だって、そうしないと倫子さん綺麗になれないもん」
「綺麗になんて、なれるはずないじゃない」

 そうは言ったものの、彼が復讐させてくれるというのなら、それに乗ってみるのも悪くはないじゃないかとも思う。相手の生活を破壊するような復讐ならともかく、倫子を綺麗にさせてくれるというのだから。

 ◇◇◇
 
 佑真と別れて戻ってきた自分の部屋は、やけにせせこましいように感じられた。

(そう言えば……)

 敦樹はこの部屋にもよく出入りしていたから、彼の使っていた食器や何やらがいまだに放置されたままだ。

(……よし!)

 まずはスーツを脱いで動きやすい恰好に着替える。昨夜の酒の席でよれよれになったスーツはあとでクリーニングに出すことにして袋に詰めた。

 それからゴミ袋を引っ張り出すと、倫子は敦樹の残していったものを猛然と袋に突っ込み始めた。燃えるゴミ、不燃物、そして服はまた別の袋へ。
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