猫系男子の甘い誘惑
 人前ではショックを見せないようにはしていたつもりだが、引きずっていないといったら嘘になる。休みの日は家から一歩も出ないことも多かった。

(……それじゃ、ブスって言われてもしかたないかも)

 ここしばらく、体重計にも乗っていない。どのくらい体重が増えたのか考えるのも恐ろしく、こわごわと体重計に乗ってみた。

 そして、目の前に現れた数字からそっと目をそらす。

 ここのところの食生活を考えれば、ドカ食いと食べないの繰り返しだ。太らない方がどうかしているし、健康にもよくなかっただろう。

 反省ひとしきりしたところで時計を見上げれば、すでに午後も半ばを回っていた。
 買い物前に冷蔵庫の中をチェックしてみたら、自分でもどうよと突っ込みたくなるほど何も入っていなかった。

「今夜は惣菜でいいかな……」

 今、夕食を一から作っていられるほどの体力はない。食料をいくつか籠に放り込んだ後、総菜コーナーへと回った。

 何を買おうかとコーナーを一周するも、先ほど体重計に乗った時の数値が頭の中によみがえる。

(控えめにしておくか)

 どうやら、ブスという佑真の言葉が思っていたより効いていたらしいという事実は、無理やり頭から追い出した。
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