猫系男子の甘い誘惑
表情を見られたくなくて顔を横に背け、つんとした倫子は返す。佑真の前でなら、表情を取り繕わないでいられるのは、一番弱っているところを見られたからだ。
「そう? でも、あの状況じゃ飲むわけにもいかないか――」
けらけらと笑う佑真には、悪気などまるでないようだ。彼がいつものペースを崩さないのは倫子の気を楽にしてくれる。
それからはさほどおもしろい話題も出ずに、地下鉄を降りた。さっさと店にドレスを返し、引き出物の袋を持ったまま、行き先は完全に佑真まかせにして続く。だが、到着したのはあの日倫子が酔いつぶれたNaoだった。
扉の前で倫子は顔をひきつらせた。
「わあ、最悪。なんでわざわざこの店を選ぶかなあ」
「だって倫子さん、あれから一度もここに来てないでしょ。だから、敷居が高くなっちゃったんだろうなって」
たしかにそうなのだが、佑真と一緒というのはどうなのだろう。だが、ここで入らなかったら、もう二度とこの店に来ることはない気がする。倫子がためらっている間に、佑真は店の扉を開いていた。
からん、と入り口のベルが鳴る。数ヵ月来なかっただけなのに、ずいぶん雰囲気が変わったような気がする――どうやら、模様替えをしたようだ。壁にかけられている絵が、以前とは違うものに変えられていた。
「そう? でも、あの状況じゃ飲むわけにもいかないか――」
けらけらと笑う佑真には、悪気などまるでないようだ。彼がいつものペースを崩さないのは倫子の気を楽にしてくれる。
それからはさほどおもしろい話題も出ずに、地下鉄を降りた。さっさと店にドレスを返し、引き出物の袋を持ったまま、行き先は完全に佑真まかせにして続く。だが、到着したのはあの日倫子が酔いつぶれたNaoだった。
扉の前で倫子は顔をひきつらせた。
「わあ、最悪。なんでわざわざこの店を選ぶかなあ」
「だって倫子さん、あれから一度もここに来てないでしょ。だから、敷居が高くなっちゃったんだろうなって」
たしかにそうなのだが、佑真と一緒というのはどうなのだろう。だが、ここで入らなかったら、もう二度とこの店に来ることはない気がする。倫子がためらっている間に、佑真は店の扉を開いていた。
からん、と入り口のベルが鳴る。数ヵ月来なかっただけなのに、ずいぶん雰囲気が変わったような気がする――どうやら、模様替えをしたようだ。壁にかけられている絵が、以前とは違うものに変えられていた。