猫系男子の甘い誘惑
落としどころがわからない
「それで、どうだった? グングニルの槍、だっけ。ぐっさりできた?」
「どうだったかなぁ……」

 ほろ苦い笑みが、倫子の口元をよぎった。

「気がついたら、どうでもよかったのよね。あの時は、絶対殺してやるとか思ってたくせに」
「わぁ物騒」

 ちゃかした口調で佑真は言う。

「おかげで、構えた槍の落としどころがわからなくなっちゃったわよ。下手に暴れるよりは、よかったんだろうけど」

 当初、倫子が想定していたものとはだいぶ違う形で決着がついたと思う。敦樹は、装った倫子を見て後悔の涙を流したりなんてしなかった。

 そうなったら――さぞやすっきりしたのだろうが、今みたいに平和な気持ちでいられたかどうかはわからない。

(――冷静に考えたら、そんなことあるはずないってわかりそうなものなのにねぇ)

 多少綺麗になったくらいで、昔の男がふったことを後悔するなら努力してみる価値はあると思う。

 だが、そんなことくらいで後悔するような相手とつきあっていたとなると、自分の見る目のなさがあまりにも情けなくなってくる。
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