猫系男子の甘い誘惑
 だって、佑真が倫子のことを好きなんて信じられなかった。

 わざわざ年上じゃなくても、知り合いの元彼女じゃなくても、佑真ならいくらでも相手がいるわけで――なんでこんなことを言いだしたのか理解に苦しむ。

(まだ、責任取ろうって思ってる……とか?)

 それってどうなのだろう。あの時のことは、今日までつきあってもらったことでチャラになったはず。

 そもそも倫子の方は責任をとってほしいなんて最初から思っていない。お互いいい大人だ。というより、むしろ迷惑をかけたのは倫子の方だ。

「だって、好きだったんだもん。あいつと付き合ってる時から、ずっと」

 佑真の言葉に、倫子は首を横に振る。

「あなた、私のことなんてろくに知らないくせに」
「知ってるよ。倫子さんは、気づいてなかっただろうけど、俺はずっと倫子さんを見てた」
「……な、なんで……」
「わからない。ただ――いつだったかな、あいつと一緒にこの店に来た時、倫子さんすごく寂しそうだったんだよ。笑ってるのに、すごく寂しそうで。別れたって聞いたのは、そのすぐ後のことだった」
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