猫系男子の甘い誘惑
 ひどい二日酔いで起きた時、「問題は事前なのか事後なのか」と口走ったら、佑真は事後だと断言した。

「だって、倫子さんずっと泣いてるんだもん。」
「じゃあなんで着てなかったのよ?」
「それは、俺。だって、付け入るスキが欲しかったんだもん。一回やっちゃったことにすれば、後の話がはやいかなー、なんて」

 最後の一枚を残したのは、最後の良心だからねと言われて倫子は脱力する。

(何が最後の良心よ……!)

 倫子は脱力した。じゃあ、あれこれ悩んだのは全部無駄だったというわけか。

「倫子さんの意志、無視してっていうのもどうかと思うんだよね?」
「脱がせたくせに」
「言っておくけど、半分は自分で脱いでたからね? 俺は止めたよ、一応――」

(……どんだけ酔ってたのよ――!)

 酒は飲んでも、飲まれるな。今後はこの言葉を忘れないようにしようと、固く誓う。
「いいよね? 付き合うって言ってよ」

 ぎゅうぎゅうと倫子の身体を抱きしめた佑真がねだる。

 まだ、当分は素直になれそうもないし、彼の手の中でいいように転がされた気しかしないが、ここまで来たら、屈服するのも悪くないような気がする。

「……言っておくけど、私性格きついからね?」
「知ってる。でも、そこが好き」

 かなわないなぁ、と倫子は苦笑いした。このままでは、きっとこの先も佑真の手の中で転がされることになるのだろう。

「倫子さん?」

 返事をしない倫子に焦れたらしく、佑馬が上目づかいにこちらを見上げてくる。彼の耳に唇を寄せると、倫子は、彼が望んでいるであろう言葉を告げた。
< 59 / 59 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:22

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

表紙を見る
表紙を見る
まるっとおまけな人生だから、今度は好きに生きていいよねっ
  • 書籍化作品
[原題]まるっとおまけな人生だから、今度は好きに生きてもいいよねっ

総文字数/128,950

ファンタジー347ページ

書籍化作品

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop