夏祭りの恋物語（3）～かき氷の誘惑～

かき氷の誘惑

　目の前の鉄板では、たっぷりの野菜と豚肉、焼きそばの麺が絡まり合いながら熱い湯気を上げている。そこへ秘伝のソースを手早くかけてコテを使って絡めていく。えも言われぬ香ばしい香りに誘われて、神社の夏祭りへと向かっていた男子高生のグループが足を止めた。

「うまそー」
「ここで買って境内で食おうよ」

　口々に言いながら、私のお父さんとお母さんの店〝総菜屋モリムラ〟の店頭にやってくる。モリムラはその名の通り普段は家庭向けの総菜を扱っているが、近くの神社で夏祭りがある日は店先で焼きそばを焼いて販売する。モリムラの入る商店街のほかの店も、たこ焼きやフランクフルトなど、夏祭り客向けの食べ物を用意している。

「焼きそば一つください」
「俺も」
「俺も一つ」

　男子高生三人の注文に、私は笑顔で応える。

「はい、三百円ね、どうぞ」

　出来たてをプラスチックのパックに入れて鰹節と青のりを振り、フタをして輪ゴムをかけ、割り箸を挟む。

「ありがとうございました。お祭り、楽しんでね！」

　それぞれに焼きそばのパックを渡してお金を受け取る。三人がパックを片手に、ゆっくりと参道に向かって歩いて行く。