夏祭りの恋物語(3)~かき氷の誘惑~
 そうして人の流れに逆らいながら、神社に向かった。

「あの女の子たちはどうしたの?」

 私の問いかけに、章太郎が平然と答える。

「タマと約束してるからって二人だけで楽しんでもらった」
「私と約束なんて……」

 言いかけた私の言葉を遮って章太郎が言う。

「タマんとこの焼きそばもあるんだ。ベンチで一緒に食べよう」
「だから、タマって呼ばないでってば」

 私は文句を言いながらも章太郎と並んで境内を目指す。章太郎があの女の子たちと夏祭りに行ったんじゃないとわかって、胸がうずうずしてきた。チラリと横を見上げると、章太郎と目が合った。

 私を見ながら歩いてたりは……しないよね?

 たまたま目が合っただけなのかもしれないけど、なんだか嬉しい。

 ベンチに並んで座って、章太郎が提げていたビニール袋から焼きそばのパックを取り出した。

「偉いだろ、売り切れないようにキープしてたんだ」
「もしかして、私と食べようと思って?」
「そう。かき氷とどっちから先に食べる?」
「そりゃ普通は焼きそばでしょ」

 そう思ったけれど、章太郎の手の中でつやつやと光る氷を見て、喉が鳴った。

「先にかき氷、一口食べようかな……」
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