夏祭りの恋物語(3)~かき氷の誘惑~
「そう言うと思ったんだ。ほら」

 章太郎が先がスプーンになったストローでかき氷をすくった。それを口元に寄せられて、私は目を丸くする。

「何?」
「何って、ほら、あーん」
「何よ、それ。一人で食べられるわよ」

 頬が熱くなる私に、章太郎がニコニコ笑って言う。

「手伝いをがんばったご褒美」
「わけわかんない」

 そう言いながらも、章太郎の言葉が嬉しくて小さく口を開けた。唇の間にストローが差し込まれ、舌の上に冷たい氷が落とされる。瞬く間に溶けたそれは、ほんのりレモンの味を残して喉に消えた。

「ん、やっぱりおいしいな」

 疲れたときにはレモン味に限る。

 名残惜しくてつい唇を舐めたとき、章太郎が言う。

「俺もご褒美もらおうかな」
「何の?」
「ほかの女の子とお祭りに行かないで、珠美のためにかき氷を買って待ってたご褒美」
「へ?」

 首を傾げた瞬間、カップをベンチに置いた章太郎に顎をくいっと持ち上げられた。まつげを伏せた章太郎の顔が迫ってきたかと思ったら……。

「んっ!?」

 章太郎の唇が私の唇に重なっていた。

「ちょっ……しょうた……ろ!?」

 驚く私の唇をぺろりと舐めて、章太郎が私の肩を引き寄せた。私のセミショートの髪に頬を押し当てていたずらっぽく言う。
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