きみが死ぬまでそばにいる
「だったらいっそ、頭のおかしいふりをしてでも、先輩を繋ぎ止めたかった。俺、先輩に復讐したいなんて思ってません。そりゃあ、最初は酷いと思ったけど、でも結局俺はそれ以上に先輩が好きなんだなって、思って」
陸の言葉は、堰を切ったように止まらない。
「父さんのことも、謝ります。俺、ずっと何も知らなくて……先輩と先輩のお母さんが辛い思いをしてる間も、ずっと、何も」
「や、やめてよ……」
陸は、ほとんど泣き出しそうだった。
別に謝って欲しかったわけじゃない。だって……きみは。
「別れて、もう会わないようにするのが一番だって分かってるんです。だけど、ちょっと欲を出しちゃって。この旅行が終るまでって、自分を納得させて。そのせいで先輩を苦しませてしまいました」
陸の言おうとすることが、ようやく分かった気がした。
わたしと目が合うと、彼は笑ってみせて、そして。
「仕方がないから、先輩のこと……もう解放してあげます」
別れを告げた陸は、どこか晴れ晴れとしていた。
わたしは別に、陸に謝って欲しいなんて思ったことはなかった。
だって、彼は何も悪くない。彼には一片の落ち度もない。
そんなこと、本当はずっとわかっていた。
それでもわたしは、彼を傷つけたかった。
その罪深さに、今更気がついた。