きみが死ぬまでそばにいる
 
「じゃあ、この前の模試は単に調子が悪かったのね。大丈夫、そういうこともあるわ。この次頑張れば十分挽回できるから」
「……はい」
「管原さんは品行方正で成績も良いから、みんな期待してるのよ。何か困ったことがあったら、何でも相談してね」

 作り笑顔で適当な相槌をうてば、まもなく職員室からは解放された。品行方正なお嬢様の役は、こういう時には便利である。
 けれどもその役も、ついに危うくなってきているらしい。一回目は大丈夫……けれど二回三回と続けばどうだろう。わたしの築き上げてきた信用が、イメージが、崩れていこうとしている。
 そして心のどこかで、それでも構わないと思っている自分がいた。
 一体どうしてしまったのだろう。いつまでも、いつまでも、心の空洞が埋まらない。関係を絶ったはずの、異母弟の姿を無意識に探してしまう。

 ――わたしは、もしかして……

 そんな風に考えることがある。
 その度、打ち消すように否定する。今更、考えること自体が無駄だ。彼とは別れた。二度と、関わることはない。

 ――これでよかったのだ。

 あの時、別れを切り出した陸に、何も答えることができなかった。
 言葉を忘れてしまったかのように物言わぬわたしを、陸は少し悲しげに見て、笑った。
 わたしの存在こそが、彼を苛ませていた。それを望んだのは他でもない自分だったのに、今更何を後悔しようというのか。そんなことが、許されるはずがない。
 
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