きみが死ぬまでそばにいる
 
 あまりにもストレートな表現に、わたしは少々面食らった。
 天童さんには、そんな風に見えていたのか。確かに、そういう風に演じてはいたのだけれど。

「あたし、実は先輩に感謝してるんですよ。欲しいものを手に入れるためには、なりふりかまってはいられないんだって。それがどんなに残酷でも、悪でも。先輩のおかげで勉強になりました」
「あはは……ありがとう」

 礼とも皮肉ともつかない天童さんの言葉には、苦笑するしかなかった。

「それじゃ、あたし急いでるので失礼します」
「ああ、うん。引きとめてごめんね」

 天童さんの後ろ姿を見送りながら、わたしはようやく自覚した。
 ずっと、彼女に嫉妬していたのだ。脅したのは半分、演技ではなかったと思う。陸をとられたくなかった。わたしの陸を、とられたくなかった。
 ここに至るまで、ずっと認めることができなかった。だって、彼は父の愛人の息子で、わたしの異母弟(おとうと)で。恋してはいけない人、だったから。
 わたしはきっと、救いようのない馬鹿だ。
 
 本当に大切なものは、失って初めて気づく――なんて陳腐な言葉なんだろう。
 
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